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Qmqvaafez
川下りをしてこの場を離れていいものかという、素朴な疑問も残る。 あとがき
美琴は慌てて首を横に振ったが、白井は劇画っぽい|驚《おどろ》きの顔のままずっと固まって いた。 |哭《な》き声を聞きつけ、まっすぐ自分に向かって墜ちてくる小さい飛竜を認めたディーノは目を|剥《む 》いたが、身をかわそうにも楽に動ける状態ではなく、その十分な|暇《ひま》もなかった。
「前におまえの同類とやり合ったことがあってな。そのとき、これ[#「これ」に傍点]を使ったのよ。ダンピ ールてな、水を浴びるとその部分が硬直しちまうそうじゃねえか?」 何一つ聞かされていないのだから判断などできるはずがない。
それがかえって、娘の自尊心にさわった。あられもない|醜態《しゅうたい》を|晒《さら》したことを記憶 されていたことに、かあっと血がのぼった。娘の顔が|羞恥心《しゅうちしん》で見る見るうちに 朱に染まる。 恭仁宮・難波宮・紫香楽宮[#「恭仁宮・難波宮・紫香楽宮」はゴシック体]
この距離ならいちいち能力の計算をするより拳で|殴《なぐ》った方が早い。 声は光の方角からきこえた。そこをめがけて白木の針が走ったが、反応は哄笑のみであった。
白井が|隣《となり》の仕切りへ振り返ると、|鎖骨《さこつ》から胸へ流れていたぬるま湯の水滴が散った 。 「もう、駄目」
もう一度蹴った。ブーツの踵には拍車がついていた。脇腹の皮膚が裂け、血が筋を引いた。それでも馬は動か ない。竦んでいると気づいたとき、六角棒は初めて蹴りつけるのをやめた。 何度も何度も。
ぎくんと体を硬くして、|弾《はじ》かれるようにシルヴィンは振りかえる。 ひと声で、全員——ばかりか炎まで凍りついたと見えるような人物は、言わずと知れたことだ。
紫野の、草をわけながら伏す鹿の野とはちがいますが、そのねようとする心は同じです、という意で、巻十二 にあり、東国の歌ではないでしょうが、紫草をよんだことは明らかです。紫は灰さすものぞ、ともありますから 、染料としては灰をさしたのでしょう。紫草をよんだ歌が、はまゆうと異なって、万葉集に数多くあるのは、東 国や近畿地方一帯に生じて親しまれたためでしょう。 そうして、山間地域としての大和と山城とでは共通性もあるのですが、山城、ことに京都の風土が、水が豊か で潤いがあるために、山紫水明的性質を有するのに対して、大和の風土は湿度が少なく、それだけ乾燥している のです。そのために明るくさわやかな感じがあります。この点は万葉集の歌の特質にもなっています。京都文学 に比べて大和文学は年代も古く、それだけ素朴であって感情の陰影がない点もありますが、それには風土の影響 もあるとみられます。
「とんでもございません。私はあなたさまに生命を救われた身。そのご|下知《げじ》に異議を唱えるなど、と てもとても」 白井は自分の弱さを否定しない。その先に活路があると信じる限りは。
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