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「私がこんなに祝福されるなんて想像していませんでした」 真鶴は産着を抱えて自室に戻った。途端、荒らされた部屋に真鶴は悲鳴をあげる。襖《ふすま》には不敵にも 死産を祈願する呪文が書かれていた。
義母が縁側の戸締りをはじめる。九野はフリースに袖を通して玄関から出た。 日が替わると本城署は朝からあわただしかった。
交通課のカウンターの隅には公衆電話がある。掲示板がうまい具合に衝立《ついたて》となり、職員に見られ ることはない。 医師が夫を起こした。「気分はどうですか」と聞いている。「大丈夫です」茂則は痰がからんだような声で答 え、続いて周りの人間を見渡し、「お、勢揃いだな」と弱々しく笑みを浮かべた。
[#ここで字下げ終わり] 「そうでもないと思うんですけど……」
「薩摩藩|異国方御用掛《いこくほうごようがかり》の浅倉雅博です」 思戸は手際よく女官を配置していく。女官たちも吉事に沸き返り職分を遺憾《いかん》なく発揮する。御内原 は暇だと喧嘩と賭博《とばく》の巣窟《そうくつ》だが、忙しいと有能な人材の宝庫に変わる。
また波打ち際を歩いてこれからの身の処し方を考え始めた。津波古は寧温の物憂げな様子にすっかり魅了され てしまった。浜に片膝をついて首を傾《かし》げる様などは舞踊の一幕を見ているようだ。 息が止まり、九野は激しく咳きこんだ。
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